ファミマとロピアの備蓄米販売戦略:コメ価格高騰への小売業界の対応

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2025年、日本では記録的なコメ価格の高騰が続いており、5キロあたりの平均小売価格が4,077円に達し、前年比で約2倍に跳ね上がっている状況です。この異常な価格上昇を受け、農林水産省は緊急対策として政府備蓄米の放出を決定し、新たな流通方式として「随意契約」制度を導入しました。この政策転換に対応し、コンビニエンスストア大手のファミリーマートが初めて備蓄米の随意契約に申し込む方針を固め、1キロ400円での販売を計画していることが明らかになりました。同時に、食品スーパー「ロピア」を運営するOICグループも随意契約を申請するなど、小売業界全体でコメの安定供確保に向けた動きが加速しています。

ファミリーマートの備蓄米販売戦略

業界初のコンビニによる備蓄米販売

ファミリーマートはコンビニ業界で初めて政府備蓄米の随意契約に申し込む方針を固めました。同社は3000~4000トン程度の備蓄米を仕入れ、全国の店舗で1キロ400円という価格設定で販売する計画です。この価格は、現在の市場価格(5キロ4000円超)と比較して約半額に相当し、消費者にとって大きな価格メリットとなります。

単身者向けの少量パッケージング

ファミリーマートの特徴的な取り組みは、単身者や小規模世帯を意識した1キロ単位の少量パッケージです。従来の5キロや10キロといったまとめ買いが主流の米市場において、これは画期的な販売方法と言えます。精米とパック詰め作業は親会社である伊藤忠商事のグループ企業が担当し、供給スピードを確保する体制を整えています。

6月上旬の販売開始目標

同社は迅速な市場投入を図り、全国の店舗で6月上旬からの販売開始を目指しています。この迅速な対応は、伊藤忠商事グループのサプライチェーンを活用した効率的な流通システムによって可能になっています。コンビニ業界として初めての備蓄米販売は、伝統的な米流通の枠組みを変える可能性を秘めた取り組みです。

ロピア(OICグループ)の取り組み

スーパーマーケット業界の動き

食品スーパー「ロピア」を運営するOICグループ(川崎市)も随意契約を申請し、ファミリーマートと同様に備蓄米の販売に乗り出す方針です。スーパーマーケット業界では、すでにイトーヨーカ堂をはじめとする大手小売り約50社が随意契約への参加を見込んでいます。

小売業界全体の対応拡大

農林水産省の発表によれば、随意契約の申請は5月27日時点で19社に達し、約9万トンの申し込みがあったと報告されています。これは政府が計画する放出量30万トンの約3割に相当し、小売業界の需要の高さを示しています。ロピアを含むこれらの小売業者は、6月初旬にも店頭で5キロ2000円程度での販売を目指すとされています。

政府の備蓄米放出政策の詳細

随意契約制度の導入背景

政府は当初、一般競争入札による備蓄米放出(計31万トン)を行っていましたが、効果が限定的だったため、新たに随意契約方式を導入しました。この変更は、流通過程の短縮による迅速な市場供給を目的としたものです。小泉進次郎農林水産大臣は「非常にスピーディーな対応で、消費者の不安は払拭されると期待している」と述べ、新方式への期待を示しています。

価格設定と流通コスト

政府の試算によれば、備蓄米の売り渡し価格は平均で60キロ当たり税抜き1万700円(5キロ当たり約891円)です。これに小売業者の経費や利益(5キロ当たり約1000円)を加えることで、店頭価格を5キロ2000円程度(税込み2160円程度)に抑えることが可能とされています。輸送費は国が負担するため、これが価格抑制に寄与しています。

対象業者と今後の拡大

現在の随意契約の対象は、年1万トン以上のコメを取り扱う大手小売業者に限定されています。しかし、小泉農相は「年1万トン未満の事業者からも参加希望があることから、要件の緩和を検討する」と述べており、今後の制度拡大が期待されます。

コメ価格高騰の現状と影響

価格上昇の深刻さ

NHKの調査によると、2025年3月時点でのコメ価格は5キロあたり4077円と、前年同期(2045円)の約2倍に達しています。これは2022年3月以降で最高値であり、家計に大きな打撃を与えています。特に単身世帯や低所得者層にとって、主食である米の価格上昇は深刻な問題です。

コンビニ業界の対応策

コメ価格高騰に対し、コンビニ各社はさまざまな対策を講じています。ファミリーマートは炊き方の工夫により、おにぎりや弁当など約70品目の消費期限を2時間延長し、廃棄ロスの削減を図っています。ローソンは独自の冷凍技術を活用した「賞味期限1年の冷凍おにぎり」を販売し、通常品より2割安く提供しています。

卸売業界の動き

JA全農は備蓄米の取り扱い指針で「落札金額に必要経費のみを加え、利益分を含めない」とする方針を明示しています。また、店頭表示については「備蓄米」と明記せず、流通混乱を防ぐ措置を取っています。備蓄米は銘柄米として単独販売される場合と、複数種類をブレンドして割安に販売される場合があるようです。

今後の展望と課題

市場安定化への道筋

政府は備蓄米30万トンの放出後も、必要に応じて追加放出する方針です。小泉農相はコメの緊急輸入の可能性にも言及し、「あらゆる選択肢を考えながら、できることは全部やる」と述べています。これらの対策が功を奏し、市場価格の早期安定化が期待されます。

小売業界の役割拡大

ファミリーマートやロピアなどの小売業者が直接備蓄米を扱うことで、消費者への迅速な供給が可能になります。特にコンビニの全国ネットワークを活用した販売は、都市部の単身者など従来の米流通がカバーしきれなかった層へのアクセスを改善します。

長期的な農業政策の必要性

石破茂首相は「中長期的な観点から農業政策を検討していくための関係閣僚会議を開催する方向で調整」と述べており、今回の危機を契機に日本の農業構造そのものを見直す動きが強まっています。生産から流通までのサプライチェーン全体の効率化が今後の課題と言えるでしょう。

結論:多様な主体による協調的対応の重要性

2025年のコメ価格危機に対して、政府、小売業者、生産者団体がそれぞれの立場で迅速な対応を見せています。ファミリーマートの1キロ400円販売やロピアの随意契約申請は、こうした協調的取り組みの一環です。特にコンビニ業界が初めて備蓄米流通に参入する意義は大きく、今後の米市場の構造変化を予感させます。今回の経験を踏まえ、日本は食料安全保障の観点からも持続可能なコメ流通システムの構築が急務と言えるでしょう。消費者にとっては、ようやく手の届きやすい価格で主食を購入できる見通しが立ち始めたことは朗報です。今後の各社の動向と政府政策の展開から目が離せません。

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